《MUMEI》

今朝の件もあり、他人事《ひとごと》ではないなと、一人、恐怖に身体を震わせてしまった。

しかし『学生の本分は勉強すること』だと、らしくないが気持ちを切り替え、一限目の国語から四限の体育まで消化する。

やっと一息つける昼休みの時間。

昼食をとるため学食や購買、はたまた校外の飲食店まで足を運ぶ生徒までいる。

当然、オレは弁当持参なので移動することもなく、毎回この教室で食べるようにしているのだ。

友人の充や、中学から付き合いのあるクラスメイト・安藤裕紀《あんどうゆうき》と、机を囲んでの雑談タイム。

バッグから自分の弁当を出そうと中を覗《のぞ》く。

「――え?」

そこには『二つ』弁当が入っていた。

……なんで? 自分では一つしか入れた覚えが――

あ……あぁっ! 今朝の記憶が甦る。

『犯人はサエコ』だっ!

つまり、もう一つの弁当は栄司《えいじ》のか。でも、一体いつ入れたんだよ。玄関のとこじゃあ、そんな感じは全《まった》くしなかったのに。

「なに一人でブツブツ言ってんの?」

オレに向けて放たれた、友人(冷たい視線付き)二人のお言葉だ。

「あー、なんでもない。気にすんな」

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