《MUMEI》
本当は
本当の三村は、純情で一途で、乙女チックな奴だったんだと知って、俺はもうびっくりした。



いや、俺だけじゃない。
他の奴もみんなびっくりした。





突然黒髪で現れて、付き合い始めた男と両想いになったとか、抱いてもらえたとか、凄く嬉しそうに幸せそうに言われたもんだから…もうびっくり。


同じ学校の同じクラスの男に告った話は聞いていたけど、それはただの冗談だろうって皆適当に聞いていた話だったから。

女を散々食い散らかしてきた、誰もがいい男だと認める長身で艶かな三村が抱いてもらえたと頬を染めている。


「だから、今度から集まり遅れっからさ…」

バイトだって一日もたない飽きっぽい三村が、人の仕事を手伝うだなんて…。



相手はどんな男なんだと激しく気になった。



聞いていた修理屋の名前で場所はすぐわかった。

日曜だから修理屋の事務所のシャッターは閉まっているが、その脇のガレージは全開に開いていた。

俺は無理して買ったばかりの車の中からじっとガレージを見る。


こじんまりとした修理屋だけど、何台も凹んだ車が所せましと置いてある。しかも殆どが改造車。
若い奴御用達な修理屋なんだって一目瞭然だ。
きっと色んな面で融通がきくんだろう。それか、そのての奴が働いているかだ。

「あの、どうかされました?」


「えっ?」

ボサッとしていたら誰かが近づいてきていた事を見逃していた。

「あー、ちょっとおかしいかも…、そこの隙間に停めて下さい」



愛車がおかしいなんて聞いたら見てもらいたくなった。
だから言われた通りに言われた場所に停めた。

うす汚いつなぎを着た男は慣れた手つきでボンネットの中の奥に手を突っ込み、中から次々とプラグを取り出した。


「やっぱりこれっすよ、もう交換時期ですね」

すっかり痛んだプラグを見せられた。
最近免許取って車買ったばかりの俺にだって解る位それは酷かった。
やっぱり中古でばか安だったから、見えないところはこんなもんなのかと思った。


「あーお金後でいーっすか?」

正直あんまり持ち合わせなくて。だってちらっと来ただけだし…。


「あーいらないっすよ、こんなんプラグなんて何百円だし、まあよかったら車検とかよろしくお願いしますね」

男はそう言いながら新しいプラグを入れ終え、ボンネットをバタリと閉めた。

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