《MUMEI》 「じゃあ、確かに伝えたから」と、先輩は去っていった。 井下って誰? 何か忘れている気がするが……思い出せない。 「――敬太、どうした?」 後ろには充《みつる》と裕紀《ゆうき》がいた。 「いや、正門のとこにいけって。井下ってヤツが待ってるってさ」 すると、二人は顔を見合わせ、すぐさまその顔がオレに向く。 「それって、局長《きょくちょう》が知ってる人じゃないってことでしょ? 大丈夫?」 「ヤバかったらソッコーで教室に戻ってこいよ?」 心配してくれるのはいいが、だったらついてきてくれよ、とは思う。 「ああ、そうするよ」 重い足取りで教室を出て、階段を下りようとし、足が止まる。 さすがに誰に呼び出されているのか分からない以上、不安だ。 それならばと、二階廊下の窓から正門を見下ろし、それらしき人物を捜してみる。 「……っ!」 前へ |次へ |
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