《MUMEI》
雨宮紫音
「からから」
ふと一瞬、ホントに一瞬であって、普通にしてれば感じることもないくらいのわずかな空気の変化がそこにはあった。
「教室に入ってくるだけでここまで空気感変えられるのは逆にスゴイ気がするがなっ」
藤田は無神経にもそう言った。が、スゴイ敏感にそうゆうところは感じとれている。

空気読めるってのは体躯に関係しないんだな。

「幸介、お前今スゴイ失礼なこと考えてないか?」
「ん?いやいや、まさか」
「そうか、ならいいんだが、、、」

危ない危ない。怒らせたら手がつけられないタイプだろうしな。

「からから」
東條は後ろ手にドアを閉めて自分の席へ歩き出した。
「ドン」
肩がぶつけられた。しかし、東條は何も言わない。明らかに悪意があってやってるとしか思えないのに、だ。
「………」

学年に一人はいる、なんだか知らないがのさばっている女子が。そいつの名前は雨宮紫音。ここ最近雨宮グループで東條をターゲットにして面白おかしくやっているのだが、だんだんエスカレートしているのは見てて明白である。

「すっ」
「バタッ」
「うわっ、どんくさいね東條さん」
次は足を引っかけるという、また古風な。
それでも東條は何も言わない。
「………」

立ち上がって席まで行くと、東條の机にどっかりとあぐらをかいて座り、バカみたいに笑っている雨宮がいた。
「マジそれちょ〜ウケるんだけど!」
「、、、どいて下さい」
「アハハ!!ないわ〜!」
まったく聞く耳を持たない。

「………」
「!?どうした幸介!?すごい剣幕だぞ」
「いや、なんでも……」
「いや、なんでものレベルじゃないだろ」

「、、どいて下さ…」
「あんたさ〜、さっきから目障りなんだけど!目の前につったってんじゃねえよ!」

ーぷつ。
「ガシャーン!!」

何やってんだ俺。ヤバくね?

そう思うよりも早く、体が動いていた。
幸介はイスを後にふっ飛ばして立ち上がり、一直線に東條のところまでズカズカと歩いていった。
「なんだ……」
「黙ってろ」
雨宮をそう言って制すると、幸介は東條の腕を掴んだ。
「ちょっと話がある」
無言の東條を、強引にそのまま教室から連れだそうとした。
そして幸介が一歩踏み出した時だった。
「やめて!」
東條は掴まれた手をがむしゃらに振りほどいた。
「キーンコーンカーンコーン」
「おはよ〜、HR始めるぞーっと、、どうかしたのかみんな?」
担任の教師が教室に入ってきて、さっぱりわからないといった風な顔で問いかけている。
幸介は黙って席に着いた。

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