《MUMEI》

「海に来たぞ」
「夏って感じで開放的〜」今年は准のサークル仲間で同じ三回生の中津武志と佐々木陽一と木原みどりと二回生の山崎結衣の4人がプラスで6人での海の家になった。

一頻り海辺で遊んだ後、夕食のバーベキューの準備を始めた。

「ねぇ夏ちゃん、卒業したら准君と結婚するの?」
野菜を切りながらみどりが聞いた。
「え、まだそんな事考えていません」
夏子は赤くなった。
「そっか、そよね」
みどりは微笑んで洗い場へとむかった。
「気を付けなさい」
隣に居た結衣が囁いた。
「忠告」
それだけ言うと結衣も洗い場へと去って行った。

夏子はあの時のドキドキ感が蘇った。

今年の春の事。
レポートを纏めていて遅くなった夏子は図書室を出た時にはもぅ辺りは薄暗くなっていた。
「やだな。暗い」
夏子が呟いた時、男女の声がした。飛び込んで来たのは聞きなれた声と見慣れた2人。
内容まではよく聞き取れなかったが、何故!?とかどうするつもり?とか、女性が問いかけているみたいだった。
それは准とみどりだった。夏子は聞いてはいけない気がして走り出していた。

何だったんだろう。

「どうした夏子姫」
ふぃに肩を叩かれびっくりした。
「びっくりした。ちょっと休憩してたのよ」
「休憩っていうよりサボりだろ」
准の笑顔に夏子も、微笑んでいた。
「まさか。私がサボる訳ないでしょ」
ウィンクする夏子

「準備が出来たぞ―」
陽一の声が元気よく響き渡った。
「行こうか」
准に背中を押され夏子も、皆が待つ洗い場へと歩き出した。


「ねぇねぇ、肝だめししない?」
食事が一段落した時にみどりがふいに言った。
「やだよ」
結衣が顔をしかめる。
「いいじゃん。やろうよ」と陽一。
「そうだよ。せっかくみんなで来たんだし、今年の夏はもう二度と来ないぞ」
と武志。
「確かにな。よしやろう」と准。
「決まりね」
満面の笑みのみどりと今にも泣き出しそうな結衣。
夏子はただ微笑んで聞いていた。
「じゃぁくじ引きね。准君、夏子とじゃなくても拗ねないでよ」
みどりが茶化し気味に言った。
「あほか」
准が答える。

くじ引きの結果、武志と夏子。陽一と結衣。准とみどりの組み合わせになった。
この時夏子は何となく嫌な予感がした。

「さて、始めましょう」
コースは、海岸を通り、海沿いにあるお墓を過ぎて、小さな洞窟の中で、30分過ごし、色を塗った割り箸を置いてくる。と言うものだ。
「簡単じゃん」
陽一が言った。
「でも、あの洞窟って心霊スポットなんだよ」
結衣が震えながら言った。 「尚更燃える」
武志が叫んだ。
「最初は結衣ちゃんと陽一君で次は私と准君、最後が夏ちゃんと武志君ね」

嫌がる結衣を連れて陽一がスタートした。

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