《MUMEI》

――反射的に窓から飛び退《の》いていた。


あの女だ……っ!


もう一度窓のほうに近づき、頭だけを覗《のぞ》かせて辺りを確認するが、正門付近でそれらしい人物は他にいない。

やはり、あの女で間違いなさそうだが……「へぇ〜」と、思わず声が出る。

彼女の周りには、既《すで》に何人も集まり、声をかけられているようだ。

そんな中で、二階からコソコソと様子を見ているオレを、彼女は正門から見上げていたのだ。

「…………」

ゆっくりと窓側から後退する。

「ヤバイな」

壁に寄りかかり、そんな言葉が口をついて出た。

本音を言うと、関わりたくない。

しかしながら、彼女が待っているのも事実。機会があれば用件を聞くと言ったのも自分自身だ。これはもう覚悟を決め、正門まで行って彼女の用件を聞くしかないだろう。


――階段を駆け下り、靴に履き替え、正門までダッシュ! さあ、かかってこい!

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫