《MUMEI》





入院生活が始まって二週間。第一段階の化学療法は終了した。
普通一般的に気分が悪くなったり熱が出たりもあるらしいんだけど、私は幸い特に体調に変化はなかった。


ただ、髪の毛はかなり抜けてしまったけど…。

枝毛だらけでガサガサなショートだってやっぱり髪が抜けたのは酷くショックだった。


お母さんが買ってくれた帽子を被って私は毎日中庭で携帯を弄るのが日課になっていた。


それは、自分の病気をよく知るために検索したり、癌体験を読んだりするためだ。


それは私を安心させたり、不安にさせたりだったけど、でもじっとしているよりはマシだった。



「…………」


ふと、病棟に繋がる廊下を見ると、入院してからよく見かける男の子が目に入った。

いつも派手なシャツを着ていて、派手な帽子を被っていて、いつも看護師さんとふざけあいをしている。



私は苦しんでいるのにって。



それはちょっとムカつくような、羨ましいような光景で。



いつもそこだけ別世界に見えて仕方がない。


私はそこから視線を外し、また携帯を開いた。

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