《MUMEI》

一つため息をついて向き直り、

「えっと、井下《いのした》さん……で、よかったよね? アイツらオレの友達。呼び出されたの知ってたから、心配で見てたのかもな」

そう言うと、彼女の表情は緩《ゆる》んだように見え、

「友達か……。そういえばアンタにワタシの名前、教えてなかったわね」

「ん、オレの名前しか言ってない」

すると彼女が右手を差し出し、

「井下和美《かずみ》。神御寺《かんおんじ》一高・二年。よろしくね」

意外にも礼儀正しい自己紹介に、オレは少し驚いた。それに神一の二年だったとは。

「へぇ〜、神一かぁ。頭良いんだ」

右手を取り、握手を交わす。


――神御寺第一高等学校は進学校で、ある程度の成績がないと入学できない。レベル的にも上の方だったと記憶している。


「その制服、神一のだったんだな。それにタメとはね」

神一指定の制服は、黒いブレザーにボックススカートか。

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