《MUMEI》

「そうみたいね……」

「やっぱりそっちの授業って難しいわけ? 当然、次の進路も決まってるとか」

彼女は目を閉じると眉根《まゆね》を寄せ、僅《わず》かな沈黙の後《のち》――

「さあ、どうかな。気にしたことない」

それだけを言うと、再び目が開いた。

「へぇ〜、気にしたことない……か」

……まただ。

今朝も感じたように、何かがおかしい。

彼女は自分に関心が無い……というか他人事《ひとごと》のように捉《とら》えている印象を受ける。

それに、時折見せる仕草や行動にしても違和感がある。

「そろそろ用件について話したいんだけど」

「あ、ごめんごめん」

彼女は真剣な眼差しを向け、

「単刀直入に言うわ。力を貸して欲しい」

「……ん?」

単刀直入なのはいいけど、それだけじゃワケがわからん。

とにかく、彼女から詳しく事情を訊《き》かないと。変な頼み事だったらイヤだし。

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