《MUMEI》
反乱
立体型魔法陣の全てに魔力が行き渡り、枢機卿が重々しく頷く。
「・・清き契約の元、護るために紡がれし結界よ。」
枢機卿の声が響く。
聖職者達は静かに跪く。
(何だ・・?)
動きがどこかおかしい。完璧すぎる。まるで操られているかのように・・
「全ての」 「戦乱の鐘となれ。」
枢機卿の声を遮るように声が響く。
声と共に一人の聖職者が白い法衣を脱ぎ捨てる。
ギィン!
バンプが即座に枢機卿の前へ出て弾かなければ容易く枢機卿は殺されていただろう。
「失敗・・って訳でもないけど。流石は守護騎士団副団長様って訳か。」
品定めをするようにバンプを見る男。
「全員戦闘態勢!!」
バンプの怒号が響く。突然の出来事に対応できていなかった騎士達が次々と抜剣し・・
ザシュン!!
半数以上の騎士が味方であるはずの騎士に斬りかかった。
「同士諸君、今こそ我らの正義を見せてやれ、薄汚れたフィリアス教など叩き潰せ!!」
愉快そうに嗤う男。
「おおお!!」
同意する声を上げる者たちは次々と守護騎士の礼装を投げ捨て、コーリア教の紋章の入った礼服を纏っていく。
「バンプ副長。」
バンプの側に集まった守護騎士は5人。バンプ達と面識もある上、腕も立つ。だが・・人数の差が有りすぎる。
ジリジリとバンプ達を包囲する輪が狭められていく。
「ゴーレス枢機卿を守りながら包囲を突破、街の守護騎士と合流後、迎撃。ココの足止めは俺がやる。」
背後で沈黙している枢機卿を横目に、指示を出していくバンプ。全員が頷いたのを確認した、
「全員死ぬことは命令違反だ!意地でも生き残れ!!!」
「了解です!!」 「は!!」 「はいよ!!」 「承知しました!!」 「やってみせます!!」
叫びと共に振るわれた爪は数人のコーリア教徒を吹き飛ばし、道を作る。
完璧とも言えるタイミングで疾走し、次々と出口へと走っていく。
出口で、立ちふさがるようにバンプが立ち止まり、コーリア教徒たちに振り返ると横薙ぎに爪で一撃を放つ。
直前に迫っていた教徒が断ち切られ、崩れ落ちる。
「コーリア教の名の下に!!」
斬りかかって来る数人を次々と葬っていく。
ベッ・・
斬りかかって来ていた最後の一人の腕を噛み千切り、床へと叩きつける。
普段のバンプからは想像もできないような殺気。牙や爪は紅く染まり、獰猛な笑みを浮かべている。
出口に向かって一撃、周囲の構造物を崩壊させ、塞ぐ。
「・・獣風情が・・」
コーリア教徒の一人がポツリとつぶやく。
その言葉に、笑みを一層強くしながら、対峙するバンプ。
「同士諸君、何をしているのです。犬一匹程度、さっさと始末してしまえ。」
立体型魔法陣の前で佇む、男。
「おおお!!」
その言葉に押されるように次々とバンプへと突撃していく。
「狼の戦い方、見せてやるよ。」
次々と振るわれる爪は的確に敵を切り刻み、周囲に肉片を撒き散らす。
突き出される剣を叩き折り、相手の首を噛み千切る。
30人近く居たはずのコーリア教徒は次々と葬られ、残りは10人を切った。
全身を血で染めたバンプは爪に刺さったままの肉片を床へと叩きつけ、怯えた眼をしているコーリア教徒たちを睨む。
(・・なんとか、なったか。)

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