《MUMEI》
4  うぇざ〜りぽ〜と
 「待たんか!この悪ガキ!」
翌日、先日の悪天候が嘘の様な晴天となった朝
桜井宅から家主のソレではない怒号が響きわたっていた
騒いでいるのは雪舟と台風・嵐の二人
どうやら馬が合わないのか、口を開けば互いに言い合いを始める
「……毎日やっててよく飽きませんねぇ」
ソレを日々見ている雨月は最早呆れ顔で
黙々と食事する桜井と向かい合って茶を啜っている
「歩!僕ごはんおかわり!」
「あ、俺も〜。大盛りで頼むぜ〜」
ハルと早雲は我関せずに食事中
桜井へと同時に茶碗を差し出してくる
全くもって落着きと協調性のない五人
暫くの間傍観を決め込んでいたのだが
余りの騒々しさに、これ以上の近所迷惑になってしまっては、と箸を置いた
「……全員、床に正座」
言ってやるや否や、全身の動きがピタリと止まり
その言葉通りに、五人は桜井の前に並び正座していた
「少し位静かに出来ないの!?朝ごはん食べられないじゃない!」
「……ほぼ全部食ってて言うセリフかぁ?それ」
早雲からの揶揄う様な声に桜井は一瞥だけをくれてやると
五人を正座させたまま桜井は食事を再開し
「ごちそうさま」
両の手を合わせ食べ終えると、身支度を始める
「じゃ、私学校行ってくるから」
「歩、行っちゃうの?」
寂しげなハルの声
つい後ろ髪を引かれそうになるのをぐっと堪え
成るべく早く帰るから、大人しく待っててと皆へと言って向ける
あの騒動の後気付いた事なのだが
どうやらこの天気の妖精たち
見守る役のひまわりである桜井には逆らえないらしく
明確な意思を持って言ったソレには絶対服従してしまうらしい
「いい?騒いだり、暴れたりしちゃ絶対ダメだからね。わかった?」
「……何度も言うな。出掛けるならさっさと行け」
聞き飽きた、と雪舟は眉間にはっきりと皺を寄せながら桜井へと手を振ってみせる
解っているのか、いないのか
今一、解らない様子のこの五人だったが
時間が差し迫っている事もあってか、もう一度だけ念を押してそして家を出ていった
「……今日は、晴れ。良い天気」
でも、今日のこの天気は今日限定。明日はどうなるか解らない、だから
天気を常に見守っているあの気象衛星の様に
自分もあの天気達をこの先も見守っていければ、と
そんな事を密かに思いながら
桜井は今日の心地よい晴れに一つ背伸びをし、大学までの道程を急いだのだった……

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