《MUMEI》

「……おい、トドメはささないのか?」
興味が失せたか、一番いいとこで幽霊のように千守は森に吸い込まれてく。

「きいてるのか?迷子になるぞ?」
危なげな足取りで、まるで反応がない。
好運、逃げるしかない。
いや、待てよ。
ここで千秋様に千守を生け捕りにして、差し出せば株が上がるんじゃないか?
あの駄犬より遥かに優れている真性のドMって証明になる……?

よし、追い掛けよう。

雑木林を抜けると断崖絶壁があり、千守はそこに勢いよく投身していった。慌てて底を覗く、暗闇しかない、下から風を受けたが、千秋様の為なら肋の何本くらいはくれてやる。

「イグッ……」
絶頂を迎えながら崖に落ちていった。

下に衝撃を防ぐ素材のクッションが詰められている、ゾンビ映画でお馴染みの廃病棟が崖の下に埋め込まれている。
思わず舌打ちする、なんだよ、痛くないじゃん。
お化けなんて肉体的なダメージが無いのだからいける、ゾンビにでもなれたなら最高かもしれない。

死なないってことは、死ぬくらいの痛みを何度も受けるのだから。

俺は不死身じゃない、死にたい訳じゃないんだ、ただ酷い痛みを受けると純粋に興奮するだけなんだ。
真性のマゾヒストなだけなんだ!!

「おーい、千守〜、変態放火魔千守〜!」

あいつ、迷子になっちまったのか?
やれやれ、世話の焼ける餓鬼だ。

「誰が変態放火魔だ。」

「返事くらいしろ!!」

混血のせいかお化けのように物音立てずに真後ろに居られると本物みたいで不気味だ。

「お前。戻れなくなるぞ」

「お前こそ、こんなとこ一人で歩いて。同行してる俺が兄である千秋様に怒られたらどうするんだよ!折角の千秋様に一目置かれるチャンスなのに!」


「アイツがテメエに一目置くなんて死んでもない。寝言は寝て言え。」


「今日はよく寝たからしっかり起きてます〜!」


「その喚くのうるせえんだよ、クソブス。」


「アッ、ブスじゃねえ!」

思わず千秋様ほどではないが蔑みの視線に反応してしまっ……アッ

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