《MUMEI》 「和美? どうしたの? 具合悪い?」 「……」 彼女は黙ったまま微動だにしない。 何か……様子が変だぞ……? 「……あ、あーっ! そっか、ゴメンゴメン!」 井下さんの知人(?)は、何かを悟ったかのようにオレを見て、 「彼氏、だよね。邪魔してゴメンねぇ〜」 「ち、ちがっ――」 否定の言葉を言い切る前に、井下さんの知人(?)は、そそくさと校内に戻っていった。 とんだ勘違いだ。このアト、厄介なことにならなきゃいいけどな。 「あの子、井下さんの知り合い?」 オレが尋《たず》ねると、彼女はコクリと小さく頷《うなず》いてみせ、 「そうみたい……」 一言だけ、彼女は呟《つぶや》くように言った。 「そっか……」 知り合い、なんだよな? それが「そうみたい」ってのは、どういうことだ? 前へ |次へ |
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