《MUMEI》

………………………………



    県営武道館
     控え室



「荷物持ったか?」



「はい。これで全部です。」



「よし。出るぞ。
ミーティングは外でやる。」



「うっす。」



………………………………














三位決定戦終了後の控え室。


敗北の悔しさを噛み締める間もなく、


慌ただしく控え室を出る準備をする海南高校の選手たちの姿がそこにあった。



………………………………














(昨日の準決からわかってた話だけど、


秀皇はやっぱ市民体ん時とは別のチームだったな…


とはいえ、


決して勝てない相手じゃなかった。


不調を敗北の原因にするつもりはないけど、


正直、


やりきれないこの感じのまま引退ってのは、


やっぱ悔やまれるもんだな…)



千葉の表情からは悲しみも悔しさも感じとれなかった。


まだ『引退』という事態に現実味を感じることができず、


静かに心を整理させていた。



「あ〜、そうだ1年。」



「はい?」



「決勝のモップ係誰か」



「俺がやるっす。」



「…あん?」



名乗り出たのは千葉だった。



(このやるせなさ。


他人任せってのは情けない話だけど、


もしあいつらが勝ってくれんなら、


少しは気が晴れる気がする。


その舞台、


間近で見れんなら見てみたい。)

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