《MUMEI》
優しいキス
「は?」
「だから、別れよう」
「おまえ、マジでそれ言ってんの?」
「私はウソはつかないよ」


これで…いいんだ

きっと…


「なんで別れるんだよ」
「理由なんてどうでもいいでしょ」
「よくねーよっ」
「…っ」
「言えよっ」

嫌だよ。

私だって別れたくないよ。

「おいっ、美香、こっちむけ」

無理だ。

こんな顔、見せられない。


私の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。


「おいっ、美香!!」

ぐいっ!

「んっ!!」


佑伸くんは私を無理やり引き寄せキスをした。

涙が止まらなかった。


「ゆ、佑伸くん…」
「ゆっくりでいい。美香の気持ちを俺はききたい」

「…わかった」


そして私は佑伸くんにすべてを打ち明けた。


「私が引っ越したら、佑伸くんと会えなくなる。それは私にとってもつらい。きっと佑伸くんにとってもそれは嫌だと思った」
「うん。それで」
「佑伸くんに悲しい思いをさせるくらいだったら別れて、赤の他人になったほうがいいと思った」
「ふぅん」
「だから…」
「俺は別れる気はないよ」
「え」
「俺は美香に会えないくらいで美香のこと嫌いになったりしない」
「だけど…」
「俺は一生美香と一緒にいるって!美香のこと、守りたい」
「佑伸くん」
「だから、別れるなんていわないでくれよ」
「っ、ごめんね」
「いいよ。だけど、もう別れるなんて言うなよ」
「うん」

そして佑伸くんはやさしく私を抱き寄せキスをした。

今までで一番優しいキスだった。

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