《MUMEI》
歌を…
最後の部活が終わろうとしていた。

転勤の準備のため、部活にくるのはこれが最後。

みんなで合奏をおえ、片付けにはいった。


楽器にスワブを通し、ケースの中にしまっていく。

この楽器とも、もうお別れだ。

力いっぱいクラリネットをみがいた。


クラリネットはとても輝いていた。

そしてみんなに挨拶をし、別れを惜しみ、家に帰った。


いつものように佑伸くんと学校をでて、私の家につくと、私に優しくキスをして別れた。

家にはいる。


けっこう片付いていた。

懐かしい写真などがたくさん出てきた。

入部当時の写真だ。

1枚1枚丁寧に見ていく。

泣きそうになった。

転勤、したくなかった。

ほんとは、ずっとここにいたかった。

みんなでコンクールにでて、みんなで笑って、みんなで卒業したかった。

だけど…


すると、友美の声がふと聞こえてきた。


美香…

歌を忘れないで…

いつでもそのくちびるに歌を…


歌があればどんな悲しみも乗り越えられる…


私も…そうだった



「友美っ!?」


ありがとね、美香…


「友美っ、こちらこそありがとうっ」


私はとても嬉しかった。

友美の声がもう一度聞けるなんて…

夢であってもいい…


友美…

私は、歌を…忘れないよ

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