《MUMEI》
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「私、怒られちゃうかもしれないけど彼にたんぽぽの草原に連れて行ってもらったんです」
「…そうだったの、だからその日、憲ちゃん嬉しそうだったのね」
看護師さんはそう言いながらにっこり微笑んだ。
「嬉しそうだったんですか?」
「そりゃあもう、ずっとあなたが気になって仕方なくて、あなたがここに居る時間はずっとそこに居たんだから。
本当は立っている事も出来ない状態だったのに…」
「……え…」
看護師さんは立ち上がり、足元の綿毛になったたんぽぽをちぎった。
「毎日泣いていたあなたが気になって、一度でいいからあなたを笑わせてみたいって、…、自分が生きてきた証をあなたを笑顔にして残したいって……」
彼…、は……
私にたんぽぽを見せてくれた次の日に、天国へと旅だっていた……。
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