《MUMEI》
飛龍
「え!!」
リアムが音に驚き聖殿の方角を見ると、白い光は次第に収まっていく所だった。
「・・・くっくっく・・我以外に、このようなふざけたマネをする輩が居るとはな。」
しばらく聖殿の方角を見ていたハンディングが呟く。
バリィィン・・
破砕音、そして降り注ぐ街を覆っていた結界の破片。
「・・・・・結界強化用の魔力を使って結界を破壊する・・か。」
静かに呟くハンディングの眼は紅く煌いていた。
「・・リアム、住民の避難を。」
「ハンディング、すごい数・・」
東の空を指差しながらリアムが呟く。
街人たちも何かに気が付いたのか、至る所で悲鳴が響く。
街の至る所で魔法陣が展開し、様々な魔物が召還、転移されていく。前回の事件のトキと同じ・・だが今回は結界が消滅し、周囲からも魔物が押し寄せてきている。そして、召還されている魔物の数や質も前回と比べ強く、多くなっている。
「・・・不愉快だ。」
次々と爆炎が上がり、街が破壊されていく。
怒りの感情を僅かに滲ませながら上空の魔物に向かって魔法を放つハンディング。
「ハンディング、無理はしないでね。」
片手の包みを解き、構えるリアム。柄を挟んで両端に刃を持つ双身刀と呼ばれる武器。弓のようなに反った形からサジタリウスブレイドとも呼ばれる。
「・・あぁ。そなたも無理はするな。」
ハンディングの返事に満足したのか、笑顔を浮かべると屋上から飛び降り、住民に襲い掛かっていたオークを一撃で葬り去る。
「「シルフィールド」の切れ味も落ちてない。イケルよ、ハンディング!!」
「リアム、そなたが道を開け!住民の安全は我がなんとかしよう。」
隣に降り立つハンディング。
「それじゃ、強行突破といきますか!!」
サジタリウスブレイド「シルフィールド」を大きく旋回させ、構え直すと一直線に魔物へと突っ込んでいく。

「生存者はこっちへ!!守護騎士団の詰め所まで護衛します!!」
次々と現れる魔物を斬り捨てながら住民を誘導していくリアム。
上空から攻撃を仕掛けてくる魔物はハンディングの結界や魔法、合流した冒険者達の遠距離攻撃によって迎撃している。
「オィオィオィ!!あんな化け物まで!!」
上空を指差しながら呆然とする冒険者、それに釣られて上を見た住人は悲鳴を上げる者、腰を抜かし、座り込む者・・
「ハンディング・・あれ幻覚だったりしない?」
はるか上空から急降下してくる翼の生えた魔物・・ワイバーンと呼ばれる小型の竜ではなく、リオレイア級と呼ばれる、飛龍。全長40メートル弱、それは確かにハンディング達のへと狙いをつけていた。
「いや、本物のようだ。仕方あるまい・・リアム、後を頼む。我が迎撃する。」
「ば・・バカかお前!!リオレイアだぞ!!魔法系の技なんて結界に阻まれて通る分けない!!逃げるしかねぇよ!!」
襲い掛かってきたホーネットバインド、蜂のような外見をした魔物を斬り捨てた冒険者がハンディングに大声で叫ぶ。
龍と総称される魔物はその身に常に高い防御結界を纏い、体を動かす事、それはそのまま魔法を発生させ、周囲を破壊する。また龍はそれぞれ独自の属性を持ち、それと同属性のブレスを吐く。
ブレスの威力は凄まじく、もっとも攻撃力が低いと言われている龍のブレスでさえ第10位程度の破壊力を持っているといわれている。
「・・あの程度の結界、打ち抜くことはできる。」
「あ~・・ハンディング、広域の防御魔法が使えるのが抜けると辛いでしょ。だったら私が相手するよ。適当に逃げ回ってれば良いだけでしょ?早くこの人たちを守護騎士のとこまで連れて行って、援護に来てね〜」
バサリ
「な・・!待て!!」
翼を大きく羽ばたかせ、リオレイア級、飛龍へと飛ぶリアム。
「く・・仕方あるまい。急ぐぞ!」
前を見据え、ファイアーボールを無詠唱で連射、ホーネットバインドの群れを焼き払う。
「防御魔法を使えるものは準備しておけ、リオレイアの初撃だけは防がなければなるまい。」
瞬動や浮遊術など多数の移動術を使用しながら住人を護り、魔物を葬っていくハンディング。
「防げって・・んな無茶な!!俺らはそんなに強くねえんだぞ!!」
何とか倒しているといった感じの男が諦めたように言い放つ。
周りの冒険者達も暗い顔を上げようとはしない。

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