《MUMEI》

――突然脳裏に今朝のニュース映像が甦り、オレは咄嗟《とっさ》に彼女の方を見る。

すると、いつの間にかこっちを見ていた彼女と目が合ってしまった。


「……あ……っ」

言葉が……出てこない。

訊《き》かなければならないことがあるのに。

しかし『怖い』!

もし……「そうだ」という答えが、彼女から返ってきたら。

自分が今まで経験したことのない、通常ではありえない光景を目の当たりにしているということになる。

背筋が凍り、足が竦《すく》む。

正直オレは、ビビってる。

なにか……なにか言わないといけないのに……唇が震えるだけで、言葉が出ない。

そんなオレを、彼女はただ、じっと見ている。


――キーンコーンカーンコーン……キーンコーンカーンコーン……
 

校内に鳴り響くチャイムが、昼休みの終わりを告げた。

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