《MUMEI》
一日目3〜聖〜
混乱の街を、聖と霧姫の乗るバイクが走り抜ける。
地震発生から約30分が経過していた。
車の間をくぐり抜け、聖はバイクを走らせる。
看板をみると、そこには渋谷区と表示されていた。
(よし、このまま走っていれば…)
という聖の思考は無情にも切り捨てられた。
聖はバイクを止める。
目の前にはアスファルトの残骸と…
(水?)
そこにあるべきはずの道路が、そこには無かった。
液状化現象。
その言葉が聖の頭をよぎる。
「くそっ!」
ダンッ
聖がバイクのハンドルを殴りつける。
だが、そんなことをしている場合ではない。
「霧姫、歩くぞ。この先はバイクじゃ無理だ」
霧姫を見ると、彼女はコクリとうなずいた。
「よし」
聖はバイクをおく場所を探した。
しかし、いい場所はない。
聖はバイクを名残惜しそうに見ながらも、それをその場に倒した。
どのみち津波に巻き込まれて使い物にならなくなるはずだ。
そう自分に言い聞かせ、聖は前を見据える。
そこには、逃げ惑う人の渦ができていた。
巨大な巨大な混乱の渦。
それは波のように周りへ広まり、さらに大きくなっていく。
聖は霧姫の手を握った。
そして、その渦へと身を投じたのだった。

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