《MUMEI》
一日目1〜聖〜
「うっうわっ強い」
「みんな、早く教室から出ろ!!」
生徒全員が廊下へと向かう。
「(こいつはやばいかも、早く3階に…んっ?霧姫!)」
ふと聖が目を細めると亀裂の先に一人の少女が居るのが視界に入った。
クラスのみんなは気付いていないようだ。
聖は突先に走り出し拡がりつつある亀裂を跳び越える。
誰かが聖と呼んでいるようだが振り向かない。
それよりも霧姫を助ける方が先決だ。
「霧姫、大丈夫か?」
「・・・」
彼女は話さない。そしてただ、聖の顔を見て足首をさすっていた。
彼女は心の病で話せないのだ。
理由は先生が言うには彼女が小さい頃両親が彼女の目の前で殺されたのが原因らしいが…。
「立てないのか?」
どうやら逃げるときに焦って足首をひねったようだ。
霧姫はコクリと頷く
「よし、じゃあ俺の肩に掴まれ。おぶってやるから」
霧姫は一瞬、戸惑った顔をするがゆっくりと聖の肩に掴まった。
そして聖が立ち上がると同時に亀裂の入った所から床と天井が崩れ落ちた。
「!!」
「しょ、聖ぉぉぉぉ!!」
夏希の叫ぶ声が聞こえた。
聖は散乱した机やなんかを跨ぎながら教室の出入口と向かう。
「聖、必ず生き延びろよっ!!」
再び夏希の声が聞こえた。
クラスのみんなが教室からいなくなる。
聖も教室を出た。
亀裂は廊下の方にまできていて跳び越えることは困難なようだ。
ここはもう隔離されている。
聖のクラスは2組で中央校舎の端から2番目なのだが一番端のクラス、1組の生徒は誰もいなかった。自分たち以外、他には誰もいない
が、いないならいないで良い
聖は非常階段から3階へ行けるだろうと考え一目散に非常階段へと急ぐ。
しかし、3階への道は閉ざされていた…
厳密に言うと3階には行けたのだが2階と同じ状態だ。
よくよく考えてみれば予想が付くが、焦りで聖はそこまで頭が回らなかった。
「くそっ。このままここに居る訳にはいかないし、一度地上に降りて何処か高い所にいくしかないか…。霧姫、その方がきっといいよな?」
霧姫が頷くのを確認すると聖は階段を駆け降りた。

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