《MUMEI》

「行けばいいんだろ!」
七生が音速で身支度を整える。いつもながらお見事。



「……大丈夫だって。一度は好きになった人だろ。」
その場に脱ぎ捨てられて散らばった寝間着を広い集める。
軽く七生の肩に手をかけた。俺の手を整髪剤でベタつく指で絡ませてくる。

体が急に畏縮した。

そうだ俺、この隣の部屋で襲われたんだ……。


「条件を出す。
万が一俺に何かあったら二郎が守ってくれるか?」

俺の思考とは裏腹に真顔で尋ねてきた。
なんだか、笑える。瞳の奥からはまるでお化けに怯える子供のような無邪気さが存在した。




頼られたり、怯えたり、そんな七生に俺は弱い。


「しょうがないなぁ。俺が居なきゃだめなんだから」

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