《MUMEI》

キーンコーンカーンコーン……





予令が屋上にまで響いてきた、









「行かなくちゃ…」









まだ口にもつけていない弁当箱を持って入り口に向かう、するとすれ違い様に







「君はそうやって逃げていくだけの人生をひたすら歩くの?癖になってるんじゃないかい?」






プツリ、張っていた糸が切れた。












「アンタに、アンタなんかに何がわかるの!?何様なの!?苦痛はね、経験した人間にしかわかんないのよ!知ったような口聞くな!」


「今度は八つ当たり?」

「……アンタと話してると苛々するだけね……」









錆びたドアの取っ手に手をやり勢いまかせに開けて出ていこうとした瞬間、






「―――――――――ッ!?」









腕を強く握られ無理矢理引き留められた。









「なにす………」
「俺が言いたいのは、そんなありきたりな負け犬になるなって言いたいんだよ。キモいから」

「キッ―――!?」

「今の君の価値ね消費税入れても30円くらいだから」









淡々と罵った挙げ句、握っていた手を放し階段があるにも関わらず背中をドンと押す。あたしは小さく叫び、ギリギリのとこでとどまった。

変な汗が背中を流れ落ちた











「値上がりしたいなら放課後またここにおいで」








微かに閉まりそうな数cmの隙間から手をヒラヒラ振るのが見えた。そして――――






バタン。







重々しく音を立てて閉まった。







「…………………………………」







――――――――――何なんだ…。











扉が閉まったその場所は薄暗く、いきなり寂しさが心を占拠してきた…。







† 

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