《MUMEI》
登校時間?
いつもの朝。だけど今は夏。
起きれば汗でシャツはグショグショになっていて、毎日が気持ちの悪い。
欠伸をしながらカーテンを開いた。朝日が差し、目を瞑る。
鞄や制服諸々を持ちながら真っ直ぐに脱衣場へ向かった。
軽くシャワーを浴び、新調した夏用の制服を着た。新品のYシャツはピッとして気持ちがいい。
「行ってきます」
机に置いてあったトーストを手にとり、バターを塗り、くわえたまま家を出た。
家の前には中学からの友人、短髪野球少年緋門善吉《ひかど ぜんきち》が居り、こちらに気付き、手を軽く振る。
「おっはー神名」
「おっはー緋門」
いつもの挨拶を終え、くだらない話をしながら学校へ向かった。
そこへ後ろから自転車に乗った同じ制服の少年が通った。
竹刀を肩に背負い、剣道少年にしては若干長い黒髪だ。
緋門は気にもとめず話を続けているが、僕は知っている。
小学生の頃、仲の良かった5人の中の1人、風影響介《かざかげ きょうすけ》だ。
だが、それはもう過去形にすぎない。
もう僕らは繋がってなんかいないんだ。

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