《MUMEI》

 

行くもんか、行かないよ、行くわけない




そうやって呪文みたいにぐるぐる頭の中で唱えていた



―――――――――けど、












「……………………………」





放課後になっても帰れなかった、そしてあたしは…









「来てしまった…………」







あたしは弱い人間だ。すぐに誰かにすがってしまう、あんな人間さえでも…











「………どうしよう、」

「開ければいいだけだよ」
「!!」








勢いよく振り向いたせいで同じ方向に髪がばらつきながら広がる。後ろにいたのは昼間の屋上に居た少年だった。少年は朋夜の髪が顔に当たったのか、「ぶっ」と目を瞑りながら小さく声を上げた。


近くだと以外に身長差があり、朋夜は肩をすくめ見上げながら









「後ろからの登場は予想外ね」

「意外性が僕の長所かな?」

「……………長所?」







「ここに来たって言うことは、値上がりしたくて来たんでしょ―?」

「…………あたしは、」

「うん、弱いね」

「!!」

その言葉はグサリと突き刺さり心臓からコプリと血液が流れ出そうだった……


朋夜の眉間に皺が寄るのを少年は見逃さない。






「大丈夫、人間は弱い生き物だから。心配しなくても君は一般的で平均的でふっつーなだけだから。キモいぐらいに」

「…………………………」

「怖いよね、一人は怖いよね。ウサギは寂しいと死んじゃうなんてゆうけど人間ほどその言葉が合うものはないと思うんだよね、僕は」









脳を麻痺させる言葉と声に揺れる心、


あたしは、あた、し…は、







「さ、扉を開けようか?」














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