《MUMEI》 リミッター。家から中学校まで、結構離れている。 自転車通学は学校的にアリらしいのだが、僕が持っている自転車は小学生時代に買ったボロ自転車一個だけなので、早々に諦めた。 それにしても、トーストしか食べてないから小腹が空いた……。このままじゃ、出てしまうかも知れない……。それはマズい……。 とか思っていると、お腹は隣にも聞こえる程鳴りはじめる。緋門にも聞こえたはず。は……恥ずかしい……。 にもかかわらず、緋門は気にせずおにぎりを食べ始めた。 「……ねえ。それはお昼ご飯じゃないの?」 出来れば今だけは食べてほしくない。 「せやけど、母ちゃんの作る朝ご飯はもの足りないんや。だからこうやってお昼ご飯を早弁せなあかんねん」 緋門は半分、関西人の血が流れている、らしい。このヘタクソ丸出しの関西弁、密かに嘘ではないかと疑っている。 「とりあえず今は食べてほしくないんだ。わかるかい?あの……リミッターが外れる可能性があるんだ。ね?ヤバいでしょ」 「う〜わっ。ホンマかいな」 それでも何故かおにぎりを食べる事を止めようとしない。 【喰らえ】 心の中で、僕の声が響いた。 いや、正確に言えば『僕』じゃない。 不意に頭に電気が走ったような感覚に苛まれた。 急に立ち眩みが起こり、膝に手を付いた。 次に顔を上げた頃には、『僕』の面影は無くなる。どうやら『僕』の時間は終わりらしい。 「……オイ」 野太く低い声を緋門に浴びさせた。 「その美味そうにも見えないツナマヨネーズを『俺』にヨコセ!!」 これが『僕』の第二の人格。 名前なんか『僕』と一緒さ。『俺』の人格になっても、『僕』の意識はまだ残っている。多分『俺』の人格の方にも残っていると思うけど。 『俺』の人格の方が出るタイミング。それは条件がある。 《時間》。これは単純。普通に出てくる《時間》がある。これは何の前ぶれもなく、リミッターが外れる。何とも理不尽で面倒くさい性癖だ。 《欲求不満》によってリミッターが外れる。欲であれば何だって外れる。これも理不尽だ。 このせいで友達に引かれることもしばしば。クラスメイトには情緒不安定野郎とさえ言われている。 これが、僕のリミッターとも言える性癖だ。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |