《MUMEI》
姉。神名晴。
それから1週間が過ぎた。
自分の部屋でゴロゴロとしながら漫画を見ていたら、急にバンッと大きな音を発てながら扉が開いた。
「え!? 何!? 何なの!?」
しかめっ面で仁王立ちしているのは、我が姉。神名晴《かみな はる》。愚姉だ。
「相っ変わらずシケた面してるわねえ。ちょっと買い物を頼むわ」
「……拒否権を要求したいんだけど」
「あると思っているの?めでたいわねえ」
……くうっ。


【嫌だ】


マズい……! 《俺人格》! 出るんじゃない、お前も晴姉さんの恐ろしさをわかっているはずだ。頼むから抑えてくれ!我慢してくれ……!
しかし……。
「…オイ。誰に向かって指図してんだ?あぁ!?」
手に持っていた漫画を投げ捨て、無謀にも仁王立ちしている姉へ向かってズカズカと接近した。
しかし近付いたが最後、《俺人格》の僕は晴姉さんに頭を抑えられ、顔面に膝蹴りを喰らい、後ろに回られ、首を抑えられた。いわゆるヘッドロック。
「あなたに頼んでいるんだけど?」
「…ぐぇっ。……だから…頼む態度に……見えね…え…」
晴姉さんの腕をバンバンと叩くが、弱めるどころか強くなっている。
「良いかしら?」
「わ……わかりました……」
《俺人格》の僕の唯一勝てない人。それが晴姉さんだ。
僕らは空手を習っていたのに、何故勝てないのだろう。

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