《MUMEI》

 激しい雨の所為で、目前はほとんど見えなかった。
 ぽつりと消えそうな、一つの明かりだけが見える。
 古い、けれども大きく立派な日本家屋であった。
 夏の間は、学生などの合宿所として解放されているらしいが、今現在はシーズンオフである。
 建物には皐月だけではなく、他にも予定外の先客がすでにいた。
 台所で夕食をこしらえているくわえタバコの綺麗な女と、それを手伝っている背の高い男。床の間のある部屋で、ショートカットの女とロングヘアの女と、その真ん中で、二枚目風の男がテレビを見ていた。
 皐月と傘の男が戻ってきて、屋内には七人の男女がひしめくことになった。
 広い家なので狭苦しくはないのだが、何か特有の重苦しさがある。
 夕食の間に、自己紹介をしようという提案で、やっと全員の名前が明らかになった。
 皐月を迎えに来てくれた男が博田隆也で、くわえタバコの女が加宮春歌。二人は元々合宿所を借りていた本来の人物であった。
 背の高い男が北野智、ショートカットが島崎舞、ロングヘアが関名真紀、二枚目風が白川光成と、それぞれ名乗った。
 四人は同じ大学のサークル仲間であり、レポート作成の資料集めのため、駅向こうの寺院に車でやって来た。帰り道、雨でぐずついたどろにはまって立ち往生している内に、車のバッテリーが上がってしまった。
 救いを求めて合宿所までやって来たのだが、博田と春歌は車を持っておらず、一先ず身を落ち着かせることになったのだという。
 食事を片付けて、一息ついた頃、台風の風雨のせいで、電気がフラフラと落ち着かなくなって、プツリと真っ暗になってしまった。
 停電になったりしたら、百物語でもやるかなどと言ったのは誰であったか。

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