《MUMEI》
再会。
強制的におつかいに駆り出された僕は、近くの商店街を歩いていた。
晴姉さんから貰ったメモを便りに買い物を続けた。
「……青汁フルーティーなど存在するのだろうか……」
想像するだけで吐き気がする。
メモにはご丁寧にお店までの地図まで書いてあった。まさか……晴姉さんの行き着けの店?
そんな疑問を抱きながら、地図とにらめっこしながら歩いていると、結構勢い良く人にぶつかってしまった。
「あ、すいません」
僕はすぐに謝りながら尻を付いている子に手を差し伸べた。
「こちらこそ……って、薫くん?」
「ふぇ?」
まさか呼ばれるはずのないと思っていたため、素っ頓狂な発言をしてしまった。
顔を上げれば、目の前には恐らくEはあるだろうバス……もとい、学園一の美少女。逆間久美だった。
「ミ……ミクちゃん!?」
『ミクちゃん』とは、『クミ』を逆さまにしたら『ミク』となる。だから『ミクちゃん』。それとちゃん付け。2年前の……あだ名だ。
「こうやって話すの2年ぶりぐらいかな? 久しぶりだね、元気にしてた?って、同じ学校なのに変だね」
首を傾げながらニコッと笑った。相変わらず可愛い。13年生きて晴姉さんに感謝したのは今だけだ晴姉さん! おつかいよありがとう!
「体調とかは問題ないよ。そちらこそ……大丈夫だった?2年前とか……」
「え? 特に何もないよ?」
今ので確信した。そっか、まだなのか。
「いんや、何でもないよ」
とりあえず話を逸らす事にした。
だが、特に話題がない……。およそ10秒間の沈黙。これが1分にも10分にも感じる! キツいよ晴姉さん!
念が通じたのか、このタイミングで晴姉さんから電話だ。ありがとう晴姉さん。
ミクちゃんに謝りながら携帯を手に取った。
放送禁止用語を大声で連呼するような話だった。要約するとアレだ。つまり『遅い』ってとこだろう。まだ家を出て30分ですぜ晴姉さん。
適当に相づちしながら晴姉さんからの電話を切った。
「…と、ごめんねミクちゃん。僕もう行かなきゃ」
「う…うん。そうだよね。私も買い物があるから……」
その表現は哀しそうで、寂しそうだった。
「あ、ミクちゃん。携帯持ってるよね? 良かったらメアド交換しない?」
「うん、いいよ!」
表面上は笑顔だが、果たして中身は……。
「ありがとうミクちゃん! いつでもメールして良いからね!僕もそうする」
「うん!」

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