《MUMEI》
お買い物。
「あ、薫く――ん! 早いね―、もう着いてたんだ――」
遠くから手を振るミクちゃん。可愛い。
さっきはいきなりであまり意識していなかったけど、ミクちゃんが着ている純白のワンピースとミクちゃん本人の組み合わせはかなりのものだ。通り過ぎる男性の諸君は皆ミクちゃんを一瞥する。かなり、綺麗だ。
「ぼ、僕も今来たところだよ」
実は到着してから5分は経っている。まだ汗は引いていない。
「っていうか、本当に青汁フルーティー買うの?」
「当たり前じゃん!」
そう言いながら、腕をしがみついてきた。胸がほぼダイレクトに当たっている。マズい、出てきてしまう。ミクちゃんは《俺人格》のことは知らないのに。


【――――】


また囁いてきた。
いまいちよく聞こえなかったけど、今出現させるわけにはいかない。
パッ○ョン○良のように右胸を強く叩いた。
「ぐはっ!」
「薫くん!?」
欲は消え、《俺人格》も抑えることが出来た。
右胸とはいえ、ガチで殴ったんだ。めっっっちゃくちゃ痛い!!
思わず四つん這いに項垂れた。
「……大丈夫、薫くん? この2年間で何かあったの?」
その読みは大正解。というか、絶対悪い方向で心配しているな……。
「だ……大丈夫…だよ……。さあ……行こうか……」
そんな僕を見て遠慮したのか、もう腕にしがみつく事はしなかった。
だが……やっぱり惜しいかった……。


目的地に到着した。
名前は『多々村屋』というシンプル。だが、中身は摩訶不思議。
本当に青汁フルーティーがあったり、青汁が緑黄色だったり、トカゲの瓶詰めがあったり。
もう……僕は来たくない……。
店の前ではミクちゃんはガタガタ震えていた。
僕は小さなため息を吐き、ミクちゃんの肩をポンッと触れた。
「ミクちゃん。無理しなくていいから。青汁フルーティーも嘘なんでしょ?」
「う…うん。ごめんね……。一緒にいたくて……」
涙目で上目遣い。ズッキューンと胸を撃たれた。
「わ…わかったから。じゃあミクちゃんの買い物にも付き合って上げるから。ね?」
しかし、そろそろ欲とか関係なしに《俺人格》が出て来そうなんだよな。ま、なるようになれだ。
青汁フルーティーを買い、ついでに緑黄色青汁も買い、その2つをブレンドさせた奴を青汁フルーティーの瓶に詰めだ。晴姉さんに対しての、せめてもの反抗だ。

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