《MUMEI》
手紙。
ミクちゃんとの2年ぶりのお買い物を終わらせ、最後は一緒になってずっと手を振りながら別れた。
寂しさもあった。けど、一番強かったのは虚しさだった。2年前は親友と呼べるような仲だったんだ。僕ら5人は。
今考えたことを振り払うように首を振った。
どんなに考えたって、あの時のような関係に戻るのは不可能なんだ。
家へ帰ると、まず最初の光景は晴姉さんの飛び蹴りの予備動作。
驚いた頃にはもう遅い。顔面に晴姉さんのカカトと土踏まずがめり込んでいた。
鼻血を拭きながら青汁を渡し、晴姉さんは驚くべき速さで台所へ向かった。
ガチャガチャと物音をたて、やがて静かになり、次の瞬間、晴姉さんの悲鳴が聞こえた。
そして、ほくそ笑む。
ざまぁみろ。




更に1週間後の放課後。
下駄箱に1通の手紙が入っていた。
ま、まままま、まさかラブレター!? この時代にそんなものが実在していたとは……!
「ん? どうしたー神名。それなんや?」
この瞬間、プツンと《俺人格》と入れ替わった。
「お、おめえには関係ねえんだよ!!」
自分が出せる限りのダッシュでトイレの個室へと入り、少し息を荒らせながら封を取り、中身を見た。
宛名は……書いてない。
文章は……『大切なお話があります。放課後に部室棟の4階の文化室に来てください。良い返事を期待しています』

「フォォオオオオオオオ!!!!」

あまりの事に、《俺人格》のキャラを忘れ、歓喜の雄叫びをあげた。
だが無理はない。丸くて小さい字。この言葉使い。ハートマークの付いた手紙。全っっっ部僕のツボじゃないか!
早急に緋門に別れを告げ、全速力で部室棟の文化室へ向かった。
……が、
「…ハァァ…ハァァ…ハァァ……」
部活のやっていない僕は運動不足。昇降口から逆の棟にある部室棟を同じペースで行けだなんて無理だ。
仕方なく歩いた。

「ここが……文化室……」
滅茶苦茶にドキドキしてきた。
文化室には、明かりがついている。いる。確実に相手はここにいる。
僕は勇気を振り絞り、ドアを開けた。

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