《MUMEI》

………………………………



    県営武道館
    男子トイレ



………………………………



「ふぅ〜...」



「さすがに意識すんなここまで来ると…」



「ピリピリしてる感じが緊張を煽るね。」



一見するだけではとても決勝に進んだチームの主力とは思えない程小柄なコンビの姿がそこにあった。



「おっ、赤高。」



「え?」



だが、
確実に2人の顔は知られていた。



「頑張れよ。決勝。」



「あ…ざっす。」



顔の知らない他校の選手から直接的に声援を受けるのはこれが初めてのことだった。



「…案外、望まれてたりすんのかもな。」



「…何を?」



「歴史の…変動を。」



日常の変化を肌で感じ、
ようやく自分たちの置かれる立場に自覚が表れていた。



「…スピード展開に光る海南の2年に、」



突然聞こえる後方からの声に振り返る2人。



「あ…」



「荒削りだが新しいタイプを確立しつつある秀皇のデカお。」



「桜井…さん…」



「そしてお前…」



声の主、
それは聖龍高校センター。


桜井春樹。


これから優勝を争う相手であった。



「来年のNo.1争いは白熱しそうだな。」



「…一見俺を評価してくれてるような言い回しですけど、


言葉の意味を深く探るとまるで今年は白熱していないような言い方に聞こえますね。


桜井さん。」



「今年も白熱してるさ。…No.2争いはな。」

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