《MUMEI》

………………………………



   県営武道館
    控え室



………………………………



ガチャッ…



「戻りましたぁ。」



控え室に戻る椎名と千秋。



「また随分と長いトイレだったね。」



ため息混じりに話すクロ。



「…別になんでもないっす。」



「…はぁ?」



意味もわからず不機嫌に返されたことにクロもわけがわからない。



ガチャッ…



続けざまに控え室のドアが開く。



「そろそろ時間ですッ!!」



入って来たのは1年マネージャー2人。


アップの時間が近づいたことを告げた。



「テープ、さっさと巻けよ。」



ヒュッ…



「あっ…」



パシッ…



「あざっす。」



クロがテーピングを椎名と千秋に投げ渡す。


2人はそれを受け取り巻き始める。



「悪いけど巻き終わるまで待ってる時間はないよ。」



訪れるアップの時間に、
クロの表情にも厳しさが表れる。



「最終調整だよ。
もう試合は始まってるくらいの覚悟がちょうど良い。」



「…おっす。」



赤高は控え室を後にする。

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