《MUMEI》
前ぶれ。
ミクちゃんが取り出した機械的な何かとは………。
ミクちゃんは少しいじり、カチッと音を出して起動させた。

『部活に協力するから! な!』

響介の声だ。
先程の会話のやりとりの一部だ。
これは……まさか……。
「それって、盗聴器……?」
響介が恐る恐る聞いた。
ミクちゃんはニコッと微笑んだ。
その微笑みに、男子陣は戦慄した。
「正確には録音機だよ。美鶴ちゃんから借りたんだ〜」
ふんわりした声なのに、すごい酷いことをしている。
「これって本で見たことあるんだけど、『男に二言はない』んだよね?」
響介は諦めたように項垂れた。
「鬼! 悪魔! 鬼畜! 酷いぞ!」
「あら〜? 褒め言葉かしら〜?」
両手を頬に当てながら笑った。ミクちゃんは本当に嬉しそうだ。
しかし……。


「こうしてると、2年前に戻ったみたいだね〜」


「「「「…………!!」」」」


ミクちゃんの何気ない言葉に、僕を含めて全員がビクッと反応した。
それから気まずそうにみんなは視線を下ろした。
「あれ? みんなどうしたの……?」
一人だけキョトンとしているミクちゃんは、心配してキョロキョロとみんなを見回した。
しばらく沈黙が続いた。
45秒ほど経ち、最初に動いたのは新斗だった。
「話は終わったろ? 部活の件は会長に相談してみるよ。じゃあボクはこれで失礼するよ」
新斗は小さなため息を吐き、椅子から立ち上がった。
そしてそのまま文化室を出て行った。
「……じゃあオレも部活行ってくる」
そう言って響介も出て行った。
取り残されたのは僕とミクちゃんと美鶴。
「………あ、美鶴ちゃん。録音機ありがとう」
録音機を美鶴に手渡した。
「あ……うん」
いかにも元気なさそうに受け取った。
「そうだ。私ちょっと用事があったんだ。またね、二人共!」
「ちょっ」
ミクちゃんは目に涙を溜めて出て行った。
僕は引き止めようとしたが、美鶴に腕を捕まれ、止められた。
「なんで止めんのさ美鶴!」
「約束を忘れたのカオルン! 何があっても久美ちゃんには思い出させちゃいけないんだよ!」
声を荒げながら言った。
「…わかってるよ……。そんなのわかってるよ」
だけど、その理由でミクちゃんを追えないのが悔しいんだ。


自宅
僕はベッドに大の字になり、天井を見つめた。
いつもなら漫画を読んでいるところだけど、今はそんな事考えていない。
そして、そのまま眠りについた。


僕は夢を見た。
みんながバラバラになる前の時代。
2年前。

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