《MUMEI》

 ゆっくりと、笑みを浮かべた春歌の丹精な顔の瞳が、全員を舐めるように見回す。
「誰かを仲間にしたら、七人ミサキの一人は成仏することができるの。だから仲間になった者が七人目になる。七人ミサキは永遠に完全なまま七人ミサキよ」
 再び、皐月は自分の体をきつく抱きしめた。
 七人ミサキが、誰かを身代わりにして成仏できるのだとしたら、もしも…‥
「ねぇ、例えば。こう考えられない?いつの間にか、気がつかない内に、自分が七人目になっているって」
 ふっと春歌のライターの炎が消えた。
 不吉な言葉の後に訪れた闇は皆の恐怖を増大させた。海鳴りが聞こえて、きゃーという叫び声が二つ。
 真紀と舞が争って白川に抱きついたのではないか。
 直後、ライターの炎が燃え上がり、春歌がろうそくに火をつけていく。
「ひどいじゃないですか」
「怖かったでしょう?」
 明るくなった部屋の中、二人に抱きつかれた白川が、やに下がって抗議するのを、春歌はにやりと笑いながらあしらった。
「大丈夫?」
 博田に声をかけられて、皐月はどこか無意識に飛ばしてしまっていた意識を取り戻した。手のひらに一杯の汗を握っている。
「ごめんね。そんなに怖かった?」
 春歌にも心配されて、皐月は照れて首を振った。
 オチがついて、怪談話の会合はお開きとなった。

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