《MUMEI》 2年前。小学5年生。 いつもの日常だった。 夏休み。 毎日のように5人で遊び倒した夏休みも、気づけばラスト1日のみとなっていた。 それでも僕らは変わりなく遊んでいた。 「カオル――ン! こっちこっち――!」 天草美鶴。 「おっせえぞ、薫!」 風影響介。 「やれやれ。何故神名がいつも鬼になるんだ……」 佐久間新斗。 「頑張れ! 薫くん!」 逆間久美。 「みんな〜! 待ってよ〜!」 僕こと、神名薫。この頃はリミッターなどなく、本当に正真正銘の普通の少年だった。 僕らはいつものように鬼ごっこをしていた。今更小学5年生の遊びではないのだが。 足の遅い僕はいつも鬼だった。 「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」 膝に手をつき、肩で息を吸う僕。 「おいおい薫。お前空手やってんだろ?こんな遊びで疲れてんなよ」 腕を組み、しょーがねーなーみたいな和やかな雰囲気がみんなにあった。 「ぼ……僕はランニングは専門外なの……!」 「その言い訳は通用しねーよ!」 僕の額にチョップした。 「…うぅ……うぅう……」 僕は当時泣き虫だった。この位ですぐ泣き出していた。 「ああもう、泣くな! 男だろ、こんくらいで泣くな、笑え!」 叱咤激励しているとでも言うのか。 「響介くん! ダメだよ暴力は!」 ミクちゃんが僕と響介の間に入った。 「大丈夫、薫くん? 痛いの痛いの飛んでけ〜〜! ……治ったかな?」 僕の額を抑え、そのようなジェスチャーをした。 「うん!」 僕は満面な笑みでミクちゃんを見た。 この時、僕は一番身長が低かった。 その事もあり、僕はみんなに弟扱いをされた。いや、新斗以外。 当時は「新斗くん♪」と呼ぶほど純粋だった。 僕らは遊び疲れ、近くのミクちゃん家にいた。 「みんなお風呂入る〜?」 ゲームをしていた僕らに唐突にミクちゃんが言った。 「え!? 良いの!? ラッキー!」 美鶴は元気良く飛びながら喜んだ。 「では、こちらです」 ミクちゃんの執事。椿秋長《つばき あきなが》さんが風呂場へ案内してくれた。 「オレらもいいのか?」 「もちろんですとも」 「っていうか、汗臭いし」 美鶴は鼻をつまみ、しっしっとした。 僕ら……そんなに臭うのかな……。 「…ふむ。確かに臭うな……」 新斗がそう言うんなら間違いない。 秋長さんに風呂場を教えてもらった。 前へ |次へ |
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