《MUMEI》
出会い
クリスマスを目前に控えた12月半ば。
今日も繰り返される私へのいじめ。

中学に入学したときから学年での虐めは存在していた。
虐めないと虐められる、そんな悪循環の中で、太っていて根暗な私が虐めの対象になることに時間はかからなかった。
もともと友達の少ない私にとって、一人で行動することにはなれていたけれど・・・

「おいっ!!デブの馨子が通るぞっ!」

そんなことをひとたび言われれば、余裕などなく人目がとても気になっていてもたってもいられない。
辛いけど、苦しいけど、学校を休むことは負けだと思って我慢した。


上からコートを着てもブルブルと震えるような冬。
トイレに入っていると、女子生徒からバケツに入っていた水をかけられた。
こんなこと何度もあったけど、あいにくきょうは着替えのジャージを持ってきていなかった。

「かえろうー・・・かな・・・」


先生に水溜りにころんでしまったと嘘をつき、着替えてくると言って家路へと急いだ。

母は風邪をひくかもしれないといって、午後からの授業を休ませてくれた。

そんな母の心配は的中して翌日の朝には、38度の熱が出ていた。

「今日は学校休みなさいね。お母さんパートの時間だからいくわね。おかゆ作ったから食べて薬飲みなさいよ。」
「うん。いってらしゃい。」

母を見送ったあと、薬を飲もうとしたけど立ち上がれず、そのまま眠りについた。

どれくらい寝たのか、
ふと目を覚ましたときには家のチャイムが10秒おきくらいで鳴り響いていた。

全神経を集中させて、玄関へと向かった。

扉を開けると、見慣れない男の子が立っていた。

「あっ!君が馨子ちゃんやなっ。初めまして、俺は佐藤龍也って言うんやけど君のクラスに今日付けで転校してきたんやっ!」

大阪弁を話す彼。
確かに先週、転入して来る男子がいると言っていたような・・・
でも何で、私の家に?

「あ、今なんでコイツ家に来たんやろ。とかおもったやろ??」
「い、いえ・・・。そんなこと、」
「なぁ、同級生やし敬語使わんでええよ。俺の事も龍也って言うて?」
「わ、分かった。」
「それと、今日俺が来たんわプリント渡しに来ただけ。・・・というか馨子ちゃんの顔見たかったっていう下心付きなんやけど・・・。
 クラスの奴は今日で会っときたかったからさ。担任に無理言って住所教えてもらったんや。ごめんな、熱あるんやろ?寒いから早よ中
 に入って休んで。じゃ、明日会おうやっ!!」 
「あ、・・・」

行っちゃった・・・。
お礼、言ってないのに。


それが、明るくて陽気な彼、龍也との出会い。

そして・・・
長い長い、恋のお話。

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