《MUMEI》 「南 涼子です。 数学を教えさせて頂きます。三年間ここでテニスをやってました。皆さん二週間よろしくお願いします。」 南先生はにっこり笑って深々と腰を下げた。実習生の誰よりも若々しくて、美しかった。肩まで伸ばした艶やかな黒髪を低い位置に一つに束ねている。背中から揺れるストレートの波が何だか大人の色香を醸し出していた。 その美貌と屈託のない性格から南先生はたちまち人気を博す。弟の涼太とは違って元気一杯の社交的な姉ということも手伝っているそうだ。 授業も的確で無駄がない。出席番号順に生徒が黒板に出て問題を解いていく。七生ばかり難しい教科書外のものばかり当てられているよーな? 最近、勉強し始めたけど流石に大学レベルは辛いだろう。 他にも七生には小さな彼女との関わりがあった。 七生に重い荷物を持たせたり、食事中は俺と七生と東屋に混じったり。掃除は七生(と俺)の班を手伝ったり。その間彼女が何か言おうとして七生が止めたことは数知れず。七生との過去に何かある事さえ抜かせば優秀な実習生なのだけれど。 しかし、彼女には多少なり感謝していた。 こうして七生が怯えてることでいつもの関係でいられるからだ。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |