《MUMEI》
僕とミクちゃん。
1時間後
美鶴に謝り倒し、ようやくミクちゃんと会う許可を得た僕は、かつてないほど緊張していた。
思い出すだけで顔が熱くなる。火照る。
だけど思い出してばかりじゃダメだ。行動しなきゃ。
ミクちゃんがいると言われている部屋の襖を開けた。
そこは和室の中央で、未だに浴衣姿のミクちゃんが布団で寝ていた。
「美鶴ちゃん……?」
そう言いながら起き上がった。
「…あ、えっと……僕です」
僕の顔を見た途端に顔を紅潮とさせ、布団にくるまってしまった。
「だ、大丈夫ミクちゃん!」
僕は近付いた。
「こ、来ないで……!」
僕は足を止めた。すっっごい傷ついた。
でも、ミクちゃんの方が1000倍傷ついている。それはもう変えられない事実だ。
僕は……ミクちゃんに近付き、側に正座で座った。
「来ないでって言ったじゃない!」
顔を上げ、枕を投げた。
僕はあえて避けず、顔面に喰らった。
けど、僕のいい顔は続けている。
「ごめんねミクちゃん。本当はあんな事するつもりじゃなかったんだ」
「……見たの?」
「……え?」
予想外な返し言葉に驚いてしまった。
「正直に言ってね!」
正直に………いいのかな…。脳裏に焼き付いてるんだよね……。あの光景……。
「………うん。はっきりと……」
僕も顔を赤らめながら言った。
だが、ミクちゃんは僕の数倍は赤い。
「うわあ〜〜ん! もうお嫁にいけない〜〜!!」
お……お嫁……。
僕は返し方に言葉を失った。
とりあえず僕は目の前にあった襖を開けた。
目の前には自然豊かな庭が広がっていた。夕焼けで一層キレイだ。
「キレイだね……。この夕焼け…」
「う、うん。私も好きなんだ。だからこの部屋を私の部屋にしたの」
布団にくるまったままだが、目が少し見える。
「…………」
沈黙が、かなり苦しい。
よく見ると、ミクちゃんがチョイチョイと手を振っている。
こっちに来て、という意味かな。
そこまで歩くと、ミクちゃんが急に起きあがり、


「……ん…」
「え?」


僕の唇とが重なり合った。
これは一般的に言えば、キスと言う。
しかし、事故チューではない。明らかに男子と女子がする故意的なやつだ。
そして唇が離れた。
一瞬のはずなのに、とても長くキスをしていたように感じた。
「これで、おあいこにしてあげる……」
そう言いながら、僕の鼻にチョンと触れた。
多分、この頃から僕は―――。



しかしこの日、ミクちゃんは……
誘拐された。

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