《MUMEI》
小鳥遊章臣。
僕は思い出した。
「……思い出したのかい?」
「……はい」
僕は思い出した事を全て刑事さんに話した。途中で涙を流す事があったけど、全て話したんだ。
「…そうか。三人組か……。その誘拐犯が言っていた場所は思い出せないのかい?」
「……はい。すみません……」
僕は服の裾で涙を拭いた。
「君はもう家に帰りなさい。お友達は我々が必ず助け出すからね」
「ぼ、僕も、手伝いたいです!」
「カオルン! 何を言ってるの!?」
美鶴が驚き、こちらへ振り向いた。
「僕のせいなんだ……。僕が弱かったから誘拐されちゃったんだ……」
刑事さんは僕の肩をポンッと置いた。
「君の気持ちは受け取った。でも、それは我々の仕事だ。大丈夫だよ。どうしてもと言うのなら」
刑事さんはポケットから手帳を出し、メモ帳の部分の1枚を千切った。
その1枚をボールペンで何かを書き、僕に渡した。
「何かわかったら、ここに連絡してくれよ」
書いてあったものは、刑事さんの名前と携帯電話番号だった。
「………読めないです」
「ハハハ。それはたかなしと読むんだ。『小鳥遊章臣(たかなし あきおみ)』。よろしく頼むよ。神名くん」


「……カオルン? どうするの?」
僕は美鶴とその家へ向かった。
「……ミクちゃんを助ける。止めたって……やめないよ」
美鶴は小さくため息を吐いた。
「……そういえば、響介くんと新斗くんは?」
お風呂騒動から見ていない気がする。
「刑事さんが家へ送ってってもらったの。あたしはカオルンが起きるのを待ってたから」
「……うん。ありがとう、美鶴ちゃん」
僕は美鶴へ向けて笑った。
「これからどうするのカオルン?」
「決まってるよ。ミクちゃんを助ける」
「相手は大人の男が三人いるんでしょ!? 無茶だよ!無謀だよ!」
美鶴は僕の前へ飛び出し、歩みが止まった。
「ダメよ。行かせないわ」
手を広げ、僕を遮る。
「お願いだよ美鶴ちゃん……。どいてくれないかな…?」
この時、僕はイライラとしていた。だが、下唇を噛み、耐えていた。
「カオルンが死んじゃう! あたしは行かせたくない!」
下唇を噛みきり、血がドクドクと溢れた。
「『俺』はどけと言っているんだ!! 早くそこをどいてくれ!!」
美鶴はビクッと驚き、一歩下がった。
「……ごめん。でも、僕は行かなきゃ」

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