《MUMEI》
信用度ゼロ。
僕は美鶴のわきを通った。
「待って!」
美鶴の一声で、僕は止まった。
「……はい、これ」
鞄から出したものは、一世代昔の携帯電話……?
「もしもの時のトランシーバー」
「トラ…ッ!?」
何故そんな物を常備しているんだ。
「カオルンは携帯持ってないんだから小鳥遊さんに電話出来ないでしょ? これに連絡してくれれば、代わりに電話するよ」
「…美鶴ちゃん。ありがとう」
小鳥遊さんのメモを美鶴に渡し、僕は走った。


………が、
「手がかりが……ない」
最大の手がかりと言えば、誘拐犯が言っていた場所の名前。
未だに思い出せない。
そうだ。誘拐なんだから、人気のない所だ。
多分そんな遠くには行っていないはずだから、そういう所を探そう。
僕は走り回った。
学校。デパートの裏。山小屋。その他諸々。
どこにもいない。
只々スタミナを消費しているだけだ。
それでも、僕は走った。
住宅街で一台のパトカーが通り過ぎ、しばらくしてから停止した。
パトカーから人が出てきた。
小鳥遊さんだ。
「神名くん。頑張っているようだが、我々に任せてくれてもいいんだよ?」
普通なら刑事さん達に任せるのが当たり前だ。けど、僕はそんな事しない。無理矢理にでも首を突っ込む気だ。
「ふむ。その目には愚問だったかな。私の娘のようだよ」
娘……と言われましても……。
「……先程、誘拐犯から逆間社長に身の代金1億円を要求された」
「い……1億円!?」
そんな大金……!
「逆間社長は素直に払うらしい。当たり前だろうな。娘と金との天秤など、結果はわかりきっている」
小鳥遊さんはタバコを吹かした。
「未だに場所の指定はない。奴らの居場所さえ掴めれば、逆間ご令嬢を救出できるはずだ」
「…居場所を突き止めれたら救出って、そんな簡単に出来るんですか!? 人質だっているんですよ!」
「大丈夫だよ。そのための対策はバッチリだから」
「…それならいいんですが……」
そう言いながらも、僕は信じていない。
「それじゃあ僕はこれで」
「ああ。何かあったら連絡よろしく」
あの人は僕の事を利用しているのか。

それにしても、僕が一番足が遅いのに何で走っているんだろう。
自転車を持ってくれば良かったな…。
全く話は違うけど、僕の過去のキャラが変わっていっている気がする。
でも、男はこういう時に変わっていくんだ。
ミクちゃん。僕が絶対助けるからね。
待っててね。

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