《MUMEI》
友だち
教室を出た私たちは、龍也くんの希望で屋上へと向かった。

「なぁ、いつから?」

冬の屋上はやっぱり寒い。

「いつ、って・・・。もう・・・、ずっと、前・・・から。」

思い出すと少し、泣きそうになった。
涙をこらえようと頑張ったけど、体は少しずつ震えだす。

「あ、ごめん。寒いよな。俺の学ラン、上から羽織っとき。」

そう、言って優しく学ランをかける龍也くん。
学ランから、彼の匂いがした。

「どうして?
 どうして、優しい・・・の?
 私と居たら、龍也くんも、きっといじめ、」
「はい、ストーップ」

龍也は馨子の口に指をそえた。

「私と居たら、俺もいじめられる。って言いたいんやろうけど、何言われても何されても、俺は大丈夫や。
 男やからな。いじめなんかにへこたれへえんわ。
 それに今まで馨子ちゃんは一人で頑張って来たんや、負けられへん。」

二人やったらなおさら無敵やん?

龍也くんは笑う。
私は、嬉しくて・・・泣いた。

「あ、りが、とぉ・・・ッ」
「わぁ!!泣くなやっ俺、女の子の涙に弱いねんっ。」
「だって、止まんないよぉ・・・」
「だぁぁっ!!」

変な奇声を上げたかと思うと、学ランで嗅いだのと同じ匂いに、つつまれた。

「泣くなや・・・。俺、意外と涙もろいねん。
 これからは二人で頑張ろうや。」

太ってることでいじめられてんのやったら、痩せられるように努力すればええねん。
今まで、我慢することに努力して来たと思うけど、これからはこの現状を変える努力をすんねん。
もちろん、太ってるからいじめるなんてあってらダメなことやし、なんも悪くない馨子ちゃんが頑張らんといけんってのは、納得いかんかもしれんけど、きっと負担は少なくなるで。今よりももっと可愛くなれるんやから、一石二鳥やしな。

一緒に、頑張ろうや。

少し背の高い龍也くんに抱きしめられて、耳にそんな優しいことを囁かれて。
正直、どきどきしすぎて何も考えられなかった。

「教室・・・、戻れるか?」
「・・・うん。」
「よし、ええ子や。ほな、手ぇつないで行こうか。俺はここに居るって証拠に。」

少し恥ずかしかったけど、ちゃんと引っ張ってくれる龍也くんの手はすごく心地よかった。

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