《MUMEI》
天草美鶴。
小学校の校庭
「……やあ。響介くんと……美鶴ちゃん……」
響介はともかく、何だか美鶴に会うのが気まずい……。
軽く謝っただけで、ちゃんと仲直りしてないからなぁ。
「カオルン」
僕を呼びながら近付く美鶴。
僕は何故か気まずい。
「足……痛い?」
予想外の質問だ。
「う、うん。痛みはあるけど、大丈夫だよ。立ってられる」
それを聞き、美鶴は口をにんまりとした。
「……え」
「カッオルーーーンッ!!」
そして抱きついてきた。
そんなに重さは感じられないが、負担のかかっている僕の足には大分キツい。
「な、何をしてるの美鶴ちゃん!?」
む、胸が……、当たってはいない……。
「幼児体形のあたしでも嬉しい?」
「ミクちゃんと比べたら、ちょっと物足りないかなー?」
「正直に言い過ぎだよね!?」
「いだだだだだだあ!!」
耳噛んでる! めっちゃ痛いよ!
抱擁から解放されたが、しかめっ面だ。
ヤバい……。怒らせちゃったかな……。
「楽しかった?」
「楽しいか、って聞かれますと。ちょっと違うような気もするんだけど……」
何だか顔が熱くなってきた。
「でも、ここには久美ちゃんが………いないね」
「………っ」
胸が杭を打たれたような衝撃が走った。
「ここに久美ちゃんがいたら、今よりずっとずっとずっ―――と楽しいよね? そう思わない?」
「ああ」と新斗。
「当たり前だな」と響介。
「うん。そうだよね」と僕。
マズい……。また涙が……。
「2、3年もあればあたしは、もっとセクシーボディに成っているだろうけど、久美ちゃんは絶対もっと可愛くなるよ! あたしが保証するよ!」
「そりゃ……まあ」
僕は想像した。今も可愛いけど、もっと可愛い。
「2、3年後にお前がセクシーボディになるなんて、何か想像出来ねえな」
た……確かに……。
「うるさいよ響くん! っていうか、興味無さそうに無視しないで新くん!」
「ふん、確かに興味はないがな」
「ひどっ!!」
僕を放って、しばらく言い争いが続いた。
「……ぷ」
僕は思わず笑い出してしまった。
「あはははははは!!」
続いて、他の三人も笑い出し、小学校の校庭は笑いに包まれた。
「カオルン。あまり自分を責めないで」
「……え?」
「久美ちゃんが誘拐されちゃったのって、自分のせいだと思ってるでしょ?」
「そりゃ……まあ」
美鶴は微笑んだ。
「カオルンは何も悪くないよ」

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