《MUMEI》 僕の友人。「……僕が何も……悪くない……?」 美鶴の言った言葉を疑問形で復唱し、僕はまたも涙を流した。 僕は今まで誘拐犯をみすみす逃がしてしまった責任から、必死になっていた。もちろんミクちゃんを助け出す事が一番だが。 実はその責任に、僕は押し潰されそうになっていたんだ。 「うん。カオルンは何も悪くない。悪いのは誘拐犯だよ」 でも、たった今その責任から解放された。 ヤバい。惚れてしまいそうだ。 「薫。たった一人で背負い込むんじゃねえよ。オレ達はお前の誰だ?」 僕の肩に肘をのせながら響介は言った。 そんな質問、簡単だ。 「みんなは、僕の友達だ」 クサイけど……。ここにいるみんなは、誰よりも信頼できる親友達だ。 「そういうこった。ちなみに久美とも友達だ。わかってんだろ? だから、オレ達が一緒に探してやる」 「ボクも協力しよう。これ以上ボクの目の前で人がいなくなるのは我慢できないからね」 メガネをクイッと上げながら新斗は言った。 どうしよう。 こんな非常時なのに、何でこんなに嬉しがっているんだろう。 今の僕には、シンプルな言葉しか思い浮かび上がらない。 「………ありがとう。みんな」 それからして。 「薫。お前まだ捜していない場所と言えばどこだ?」 「……思い浮かばないね……」 「先程言ったので全てか? もうボクらの町の近所じゃ隠れる場所は少ないぞ?」 「うむむむ」 4人で輪になり、地図とにらめっこをしていた。 ………僕らが住んでいる土地って、意外と広いんだなー。 「ここの土地って、意外と広えんだな」 まさか響介と思考がシンクロするとは……。これは屈辱的な感情? 「オイ神名。行った所に×印をしてくれ。早くしろ。一刻を争うんだ」 「あ、うん。ごめん」 僕は地図の8カ所に×印を付けた。 「結構回ったんだな」 「……無我夢中だったから。そんなに細かく調べたわけじゃないんだけどね」 「大丈夫さ。恐らく簡単に見つかるような場所になどいないだろう。一つ一つ細かく調べたって時間の無駄さ」 顎を指に乗せ、ふむふむと頷く響介。 「っつうか思ったんだけどさ。あえて人影がない所じゃねえんじゃねえか?」 「あり得ないな」 新斗は即答。 「何故!?」 「恐らく犯人はそれ程頭が良くない。わざわざ私有地に潜入して誘拐したんだぞ? 僕ならこんなバカなことはしない。よって誘拐犯は『あえて』などするはずがない。思い浮かぶはずがない」 僕は決して誘拐犯に同情などしない。 前へ |次へ |
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