《MUMEI》 彼女はゆっくり口を開けた。 一度として面識のないあたしのところにわざわざ会いに来てまで言いたい一言、変に緊張が走った。 そして彼女は一段と綺麗な笑みで…… 「死ねばいいのに」 「!」 たったその短い言葉、けれどその殺意を含んだ言葉の重みに朋夜の脳内にはドクンと波打つような衝撃の波紋が広がった…。 「これは純粋な悪意、誰にでも持ち合わせる感情の一部」 笑顔笑顔笑顔。 優しく冷たくただその表情だけを浮かばせて、あたしは彼女に恐怖を覚える。 「嫌いで大嫌いで、だけど少し羨ましいのよ?先生に気に入られている貴女が。気付いてるんでしょ?あの人の貴女を見る目が他の生徒と違うこと」 ――――――――――ドクン。 「…………な、なんのこと」 「あら、しらを切る気?ほんとに腹が立つ。あの人は貴女が好きなの、生徒として?違うわ……………女としてよ」 「違う!!」 「アハハハ!貴女何?あの人を信じてたの!?教師だからって安心してたの!?自分の周りが普通であることに固定概念があるみたいだけど違うのよ?ニュース見てみなさいよ、非日常な事件が毎日毎日報道されてるのが日常じゃない」 せっかく見ないように視線を外してきたあたしの不安を無理矢理目の前に突き付け風船を針で割るように弾けさす。 「いつも通りの日常なんて簡単に崩れてくのよ、綺麗にはめこんでいたパズルのピースがバラバラこぼれ落ちるように。何で貴女なのかしら、ただ成績が良いってゆうだけで何で?」 「こ、ないで!!」 取り巻く雰囲気が暗く暗く、不気味さが溢れる。彼女はだんだんと拒む朋夜に近付き肩に手を置く、朋夜は小さく声を上げ恐怖がいっそう増してくる。 一方終始笑っている彼女は綺麗な顔を耳元に近付けゆっくりとその口を開けた…… 「先生を私に頂戴」 「!?」 「あの人が必要なのは貴女なんかじゃない、私よ。こんなにもこんなにも愛してるんだもの報われないなんて酷いわ」 † 前へ |次へ |
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