《MUMEI》 潜入。たどり着いた。 時、既に20時。 夏とはいえ、もう暗くなる時間だ。 夜の病院は怖い。だけど夜の廃病院の方がもっと怖い。ちびってしまいそうだ。 だけど、行かなければならない。 ミクちゃんはもっとこの数十倍は怖い思いをしているのだから。 「さあ、行こう!」 僕らは安易に潜入し、廃病院の中へ入っていった。 正面入口の扉の硝子は割られてあり、大人1人分は通れるようになっていた。 「二手に別れるか?」 「それは危険だ。4人でも充分危険なんだ。それはマズいだろう」 「うん。そうだね」 僕らは奥へ進んだ。 「……? ここどこだ?」 割れた食器などが散乱し、足の踏み場が難しい。 そこへ、響介が何かを拾った。 「おお! 飲み物じゃん」 1リットルのペットボトルだ。 色はとても澄んだ透明感あふれる水。 だが、こんなもの……飲み物であるはずがない……。 「おい風影。そんなもの飲むんじゃ―――」 「ゴックン」 あ、飲んだ……。 「しょっぱ――――――!!!!」 飲んだ水を吹き出しながら叫んだ。 叫んだ声はエコーして病院に響いた。 「バカ――――!!」 美鶴は限りなく小さな声で響介に叫ぶ。 響介の口を塞ぎ、4人で同時に伏せた。 3分程経っても何も起こらない。 「…どうやら大丈夫だったようだな」 「響くんバカじゃないの!? 危なかったじゃない!」 美鶴が響介の頭をポカポカと叩く。 「あたたた! まさか塩水とは思わなかったんだって……!」 新斗があらかじめ持っていた水筒の一杯をがぶ飲みし、さりげなく水筒の中身を飲み干した。 「塩水…? 何でこんなものがここに?」 「さーな。って、持ってくのか新斗?」 塩水のペットボトルを鞄に入れる新斗を見て、響介は驚いた。 「何かに使えるかもしれないからな」 「いつ使うんだそんなもん」 「か・も、しれないからな」 『かも』を念を入れて響介に言った。 「さあ行くぞ。ここに留まるのも危険すぎるからな」 前へ |次へ |
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