《MUMEI》
始まり。
そして、教室に戻った私たちはみんなの注目を浴びながら一日を過ごした。
龍也くんは私と目が合えば笑顔で話しかけてくれた。

放課後、靴箱に待っているようにと指示を受けた私は、龍也くんがくるのを待っていた。

「ごめんっ。ちょっと迷ってしまったわ」
息を切らして走ってきた彼をみて、今日のことが鮮明に思い出されて恥ずかしくなった。

「あれ??なんで顔あかいの?熱でもあるんちゃう?」
「い、いやなんでもないの・・・」
「ま、ええわ。ほな帰ろか」
「へ??」
「あ、そか。言ってなかったな・・・。今日から俺が送り迎えするから」

しれ、と当然のことのように言った彼に私は驚いた。

「い、いいよ!!一人で帰れるっ」
「・・・。なんで?迷惑?」

少しブスっとした彼が可愛かったのは口が裂けても言えない・・・。

「そ、そうじゃ、な、くてね・・・その、龍也くんてだって引っ越してきたばかりで大変だと思うし・・・」
「俺が勝手に決めたことやから気にせんといて。俺、万年暇男やから学校終わったらなんもすることないねん。
 だから馨子ちゃんの都合にあわせるよ。これから送り迎えしてええ??」

かがむようにして、私の顔を覗き込んでくる彼。
ち、近いっ!

「わかった、か、ら、その・・・」
「その??」
「顔・・・。」
「ん?俺の顔なんかついてる?」

この人は自覚が無いのか、天然さんなのか・・・。

「か、お、近い・・・。です、は、ずかしいから・・・。」
「・・・あ、そういうことね。てか、男なれしてないんだ?馨子ちゃんかわええわぁ」
「か、かわっ!や、やめてくださいよっ」
「ほら、その反応が男的にはたまらんねん。もっといじめたくなるわ」

不敵な笑みを浮かべて笑う彼の顔が夕日に反射して、すごくきれいだと思った。

「ありがとう、龍也くん。私、頑張るから。」
自然にこの言葉が口を伝わって、同時に笑みがこぼれた。

「馨子ちゃん・・・」
「はい?」
「いまの笑顔アカン・・・めっちゃドキドキしてまう・・・」
「はっ!?」
「可愛すぎるで、その笑顔。ダメヤなぁ・・・。馨子ちゃん痩せたら絶対モテキ入ってまうやんっアカンっやっぱ痩せたらアカンわ!」

意味のわからないことを言い出した彼。

「いやですっ絶対痩せますっ。だいたい痩せろって言ったのは龍也くんだし・・・」

「せや。なんか俺矛盾しとるわ。なに言ってるんやろ・・・。二人で頑張るっていうたばかりやもんな」

変わろうや。二人、一緒に。

そうして、私の世界は少しずつ息を吹き返した。

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