《MUMEI》
自由を愛する魔王
 昔ある世界のある国に人々に魔王と呼ばれる恐ろしい王がいました。彼は民衆のあらゆる自由を奪い、あらゆる規則を強い、彼が決めたとおりの生活を強制させていました。
 もちろん人々は抵抗しました。ある者は同じ志を持つ人を集めて抗議を行い、ある者は王様に直談判に行き、ある者は武器を持って城に攻撃を仕掛けました。
 しかし、すべては徒労に終わりました。自由を訴えた人間は全員捕まり、首を飛ばされてしまったのです。
 人々は彼らの死を悲しみ、同時に王様にいっそうの恐れをいだきました。
 しかしある日転機が訪れました。傲慢な王様が暗殺されたのです。その勇気ある行動を起こしたのは、王の娘である第一王女でした。子供の頃から厳しくしつけられていた彼女は武芸に優れ、他国との争いでも最前線で指揮を執る男勝りの勇気と意志をもってる人でした。また、人々の苦しみにも人一倍聡かった彼女は、自らの手で肉親である父を討ったのです。
 王の死の翌日、彼女は民衆を城の前に集め、彼らの前で声高々に言い放ちました。
「諸君等を苦しめる王は死んだ。この国には、もはや自由を束縛する者はなにもない。諸君は自由だ」
 彼女の言葉に人々は喜びました。すべての人が王女を敬い、賞賛しました。
 王女が王位についでから、この国は変わりました。生家の家業をつぐことしかできなかった人々は、学芸や武芸など、自分の得意とする物で仕事に就くことができるようになりました。身分制度も廃止し、王族を除く全ての人々が平等になりました。政治は王女が最終決定権を持っていましたが、基本的には民衆の間で選ばれた人たちが行うことになりました。
 この国には本物の自由が訪れたのです。
 人々は輝かしい未来を確信しました。

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