《MUMEI》
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 しかし彼らの願い通りの世界は訪れませんでした。
 体が弱い人や実力がない人には、何の仕事にもありつけませんでした。彼らは自分たちでも働ける環境を作ってほしいと望みました。民衆の代表達もそうすべきだと賛成しましたが、王女が許しませんでした。
「誰もが違いがある。それを理由にして国が助ければ、それは平等とは言えないし自由を奪うことになる」
 結局彼らは、大金を持っている人たちの奴隷となったり、なにも食べることができずに飢え死にしてしまいました。
 また、街の中心に浮浪者が集まり、彼らが強盗行為を働くことが問題になりました。人々は彼らを罰する規則を作るように望みました。しかし、これも王女が許しませんでした。
「人は天の下に平等だ。人が人を裁いて良いはずがない。それは人の自由を奪う愚かな行為だ」
 結局人は自衛の手段を養うほかにはありませんでした。自衛の自由は王女も認めていたからです。
 ある時から街に、守る代わりに金を要求する武装集団が現れました。彼らは、とんでもない金額を要求する上に、自分達の申し入れを断った人々に残虐な行いを働きました。人々は彼らを律する規則を作るように願いました。もちろん、王女が許しませんでした。
「彼らの職業の自由を奪うわけにはいかない」
 街には暴力が蔓延り、死人がでない日がなくなりました。
 ついに人々は行動を開始しました。ある者は同じ志を持つ人を集めて抗議を行い、ある者は王女に直談判に行き、ある者は武器を持って城に攻撃を仕掛けました。
 しかし、すべては徒労に終わりました。規則を求めた人間は全員捕まり、自由を侵害する悪魔の手先だと、首を飛ばされてしまったのです。
 この時から人々は王女をこう呼び恐れるようになりました。
「魔王」

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