《MUMEI》
誘拐犯。
何でこうなったのかな?
私はさっきまで、薫くんと話していたんだ。
キスをしたんだ。
思い出したら顔が火照るのを感じた。
幸せを感じられる一時だったのに、なんでこうなってしまったんだろう?


薫くんと話をした。
薫くんが部屋から出て行った。
夕焼けが差していたはずの襖から、部屋を影で覆われた。
振り向くと、黒い服を着た大人が3人。
怖い。そう思った。
すぐに口を抑えられた。
私の悲鳴を聞いたのか、薫くんが戻ってきた。
逃げて。
私はそこで視界が真っ暗になった。
目覚めたらそこは最悪だった。
場所は多分、病院。
真ん中の台に寝かされていた。
腕は縛られている。足は大丈夫みたい。
目の前には誰にもいない。でも、ナイフのような物が見える。
怖い。私はこれで殺されちゃうのかな?
でも、それを受け止めるしか、今は出来ない。情けない……。
そんな事を思っていると、後ろから声が聞こえた。
恐る恐る後ろに振り向いた。
そこには2人の男の人。
トランプをしているのかな?
1人は金髪でタバコをくわえている。簡単に言えば、チャラそう。
1人はハ……、スキンヘッドで、ずっとサングラスを付けている。
なんだか漫画で出てくる悪役みたいだ。
もしかして意識しているのかな?
「ああ? もしかして気ぃついたか?」
金髪の人がこちらを向いた。
心臓をもがれると思うくらい驚いた。
…マズい。気付かれた。
「あ、あなた達は……誰?」
話していると泣き出しそうになった。
「君が何もしなければ、こちらも危害を与えるつもりはない。楽にしたまえ」
ハゲ……、スキンヘッドの人が丁寧に言った。
何だか想像と違う……。
私は台から足をつきだしたような状態で座った。
「ちなみに、我々は名乗る事はしない。バレては意味がないのでな」
「わ、わかりました……」
これ以上余計な事は喋らない事にした。


30分程が過ぎた。
トランプがいい加減飽きたのか、寝ている金髪の人。本を読んでいるスキンヘッドの人。
急に扉が開き、金髪の人は飛び起きた。
「な、なんだ……。おめえか……」
「サツだとでも思ったか?」
少し長めな髪にパーマがかかっている、背の高い男の人だ。
「今し方、このガキの親父に身代金を要求させてきた。あの様子じゃちゃんと用意するだろうな」
「マジで!? いくら!?」
「聞いて驚くな。1億円だ」
「お、おお…?」
「なんで反応が薄いんだ」
「なんかテレビだともっと高い額ばっか出てきてんじゃん?」

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